こんにちは。
こうのす共生病院で非常勤医師をしている松山敏之と申します。
この度、鴻愛会のベトナム・カンボジアへの医療視察に同行させてもらいました。
だいたいのカンボジアの医療体制は、アンコール共生病院にいる西本さんの記事でおわかりかと思いますが、今回の医療視察の報告も兼ねて、私からも少しお話させてもらおうかと思います。
カンボジアの歴史
カンボジアの医療体制を知るにはまず、カンボジアの歴史を知ることが大事です。
すごく遡ると大変なので、必要なとこまでです。
さらに歴史とか言われると眠ってしまう人、読むのをやめてしまう人が出そうなので、すごく簡単に。
1976年、カンボジアにポルポト政権が誕生しました。極端な原始共産制の実現を目指すポルポトは自分の権力を脅かす可能性がある人間を次々に殺していきました。そしてあろうことか、一般的に知識人と呼ばれる大学教授、医師、弁護士、教師、記者などもその対象となり、知識人の大虐殺が始まります。信じられないかと思うかもしれませんが、マジです。その虐殺も非常に凄惨なものです。(一説では眼鏡をかけているだけで知識人であるとみなされ、殺されたとか。。。)
当時カンボジアに残った医師は国全体で数人だったとか
知識人がいなくなると、自分の権力を脅かす人間はいなくなりますが、国全体はどうなると思いますか?
医療にだけ限って考えると、病気になって病院に行っても医師がいません。一部のコメディカルだけで治療が始まります。それだけではありません。医療を学びたいと思っても教えてくれる人が一人もいません。また当時の政策で医学書をほとんど焼き払われてしまったため、自身で勉強することも出来なくなってしまったのです。
ポルポト政権崩壊後、国全体での大虐殺、大飢饉などの凄惨な状況がわかり、その後外国から支援が入ります。1990年代、復興を始める当初はわずかに生き残った医療従事者によって医療が担われていました。当時の課題はプライマリーケアと医療従事者の育成。本当に1からのスタートとなります。
1995年の統計では医療従事者の介助のもと誕生する子供はわずか30%、25人に1人の赤ちゃんは1カ月以内に亡くなり、また約9人に1人の子供たちは5歳未満に亡くなっています。半数の子供は深刻な栄養失調であった。それがカンボジアの簡単な歴史になります。
さて、現在のカンボジアの医療体制を簡単に説明していきたいと思います。
人口
約1,600万人(2018年)
ちなみに日本は1億2397万人(2024年)
平均寿命
男性66.6歳、女性70.7歳 (2015年)
日本は男性が81.05歳、女性が87.09歳 (2022年)
カンボジア医師数
総医師数は2,568人程度 (2014年)
1万人あたり医師数は2人にも満たない。
ちなみに鴻巣市の人口は11万7579人(2024年)です。鴻巣市の中に医者が20人程度しかいないと考えるとイメージしやすいでしょうか。
日本は全国に33万9623 人の医師がいます(2020年)
カンボジアの平均月収
カンボジアは、アジアの新興経済国として急速な経済成長を遂げています。
しかし、平均年収は約1,200米ドルとされています。(1ドル=150円として18万円)
物価の違いもありますが、その生活水準や生活費は、先進国に比べてかなり低い水準にあります。
カンボジアでの医療保険
包括的な国民皆保険制度が整備されておらず、医療費は基本的には自己負担。
貧困層が任意加入できる保険もあるが、受診できる病院は限られる。
カンボジアの病院
カンボジアには、公立の医療機関と民間が運営する民間医療機関がある。
都市部の富裕層は海外の民間病院が経営する病院で高度な医療が受けられるが、公立病院の医療レベルは非常に低い。
だいたい状況がつかめたところで、今回の医療視察にすすみましょう。
もう疲れたよ。って声が聞こえそうですので、今回はここまで。
その2から医療視察での現実をお話していきたいと思います。
では!!!
引用
(医療国際展開カントリーレポート、新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報カンボジア編 2021年3月 経済産業省)