
理学療法士(PT)や作業療法士(OT)は、国家資格取得後も学び続ける職業です。
学会や研修会への参加、認定資格の取得など、さまざまな学びの形がありますが、その選択肢のひとつが「大学院(修士課程・博士課程)」です。
実は当院には、働きながら大学院で学び、修士号を取得したリハビリ専門職が3名在籍しています。
それぞれが異なる分野で学びを深めながら、その知識や経験を日々の臨床に活かしています。
「大学院ではどのようなことを学ぶの?」「仕事をしながら通うことはできるの?」「なぜ社会人になってから再び学ぼうと思ったの?」
今回は、そんな疑問にお答えするため、3名のスタッフに大学院進学のきっかけや学びの内容、そして今後の展望について話を聞きました。
「埋もれない療法士になるために」理学療法士 鈴木さん
鈴木さんが大学院進学を考えたきっかけは、前職で出会った先輩からの助言でした。
当時勤務していた病院には大学院へ進学する療法士も多く、実習指導者だった先輩から「多くの理学療法士がいる中で、自分だけの強みを持つことが大切だ」と背中を押されたといいます。
また、近年のリハビリテーションでは、科学的根拠(エビデンス)に基づいた実践が求められています。論文を正しく読み解き、臨床に活かす力を身につけたいという思いも、進学を決意した理由の一つでした。

学んだことをスポーツ現場へ
大学院では、投球動作をテーマに研究を実施。3次元動作解析装置「Vicon」を用いてスポーツ動作の分析を行いました。
現在はインソールに関する研究にも取り組んでおり、今後はスポーツ選手へのリハビリテーションや動作分析を活かした評価・治療に力を入れていきたいと考えています。
また、自身の学びを後輩たちにも伝えながら、リハビリ専門職全体の成長につなげていきたいと語ってくれました。
「機能だけでなく、その人の人生を支えたい」理学療法士 清水さん
訪問リハビリテーションに従事する清水さんが選んだのは、老年学専攻でした。
老年学は、高齢者を医学的・心理学的・社会学的な側面から総合的に学ぶ学問です。
当時、訪問リハビリの現場では、「身体機能の改善には限界がある」「維持期に入っている」という利用者さんに多く出会いました。
しかし、そのような状況でもQOL(生活の質)を高めることはできるのではないか。
そんな思いが進学の原動力になったといいます。

論文を“患者さんのため”に活かしたい
大学院で学ぶ中で、清水さんが特に感じたのは、「論文と臨床をどうつなげるか」という課題でした。
多くの療法士は教科書で勉強します。
しかし、その教科書の土台となっているのは研究論文です。
だからこそ、「論文を患者さんに当てはめるのではなく、目の前の患者さんに必要な論文を探して活かすことが大切」だと話します。
エビデンスを重視しながらも、心理面や社会面にも目を向け、その人らしい生活を支えていく。
清水さんは、そんなリハビリテーションを目指しています。
「もう一度、本気で勉強したかった」作業療法士 原さん
大学院進学には、実は2つの理由があったそうです。
ひとつは、子どもの頃からの夢だった「大学の先生になること」。
当時は漠然と、「大学の先生ってすごそう」「お金持ちになれそう」という憧れもあったと笑います。
大学教員を目指すためには大学院での学びが必要であり、その思いは社会人になってからも心の中に残っていたそうです。

社会人になってから選んだ学び
もうひとつの理由は、作業療法士3年目の頃に感じた「もう一度しっかり勉強したい」という気持ちでした。
作業療法士として経験を積む中で、改めて基礎から学び直したいと考えた原さん。
大学院は、自分で選び、自分の意思で通う初めての学びの場だったと振り返ります。
大学院では研究だけでなく、生理学などの専門分野についても深く学びました。臨床経験を積んだからこそ見える疑問や課題に向き合うことで、新たな視点を得ることができたといいます。
また、大学院で出会った仲間との交流も大きな財産になったそうです。学ぶ楽しさを改めて実感しながら、自身の成長を患者さんや地域へ還元していきたいと考えています。
学ぶことは、自分のためだけではない
今回お話を聞いた3名に共通していたのは、「学位を取得すること」が目的ではなかったということです。
大学院への進学理由はそれぞれ異なります。研究を深めたい、自分の専門性を高めたい、もう一度しっかり学び直したい――そのきっかけはさまざまでした。
しかし、その根底にあったのは、「学んだことを患者さんや利用者さん、地域のために役立てたい」という共通の思いでした。
大学院では、専門知識だけでなく、研究手法や論文の読み解き方、多角的な視点で物事を考える力を身につけることができます。リハビリテーション医療の世界では新しい知見が日々生まれており、それらを正しく理解し、目の前の患者さん一人ひとりに合わせて活かしていくことが求められています。
また、身体機能だけでなく、心理面や社会面にも目を向けながら支援することは、その人らしい生活やQOL(生活の質)の向上にもつながります。
そして何より、3名が口を揃えていたのは、「学ぶことは楽しい」ということでした。
大学院には、自ら学ぶことを選んだ人たちが集まります。年齢や職種、経験もさまざまですが、そこでの出会いや交流は新たな刺激となり、自分自身の視野を広げてくれます。
大学院進学は決して簡単な選択ではありません。仕事と学業の両立も必要です。それでも今回お話を聞いた3名は、働きながら学び続けることで、自身の成長だけでなく、患者さんや地域へのより良い医療・介護サービスにつなげてきました。
当院でも、それぞれの専門性を高めながら学び続けるリハビリ専門職が活躍しています。
これからも私たちは、学びを止めることなく、その学びを患者さんや地域の皆さまへ還元していきたいと思います。