MFATとは
MFAT(Micro-Fragmented Adipose Tissue)は採取した患者様ご自身の脂肪組織(皮下脂肪)から自家脂肪組織由来微小細断脂肪組織片(MFAT)を専用のキットで細断して不要な血液成分や油分を除去し、作製する非常に細かい脂肪の破片です。MFATには脂肪細胞をはじめ、筋細胞や軟骨細胞、骨芽細胞に分化する間葉系幹細胞やペリサイト(血管周皮細胞)、細胞外基質(コラーゲンと結合組織)が含まれています。また、採取した脂肪組織からその場で作製して投与ができる簡便な方法です。
MFAT治療の目的
MFAT治療では、作製したMFATを関節内に注射します。この際、細胞から分泌されるサイトカイン(タンパク質)が抗炎症効果を発揮し、痛みを緩和するとされています。また、抗炎症作用や治癒作用に加え、脂肪組織が半月板断裂や軟骨病変などの欠損部を補う役割も果たします。これにより、痛みを軽減し、関節の機能の改善を目的として実施される治療です。
MFAT治療のメリット
MFATは患者様ご自身の細胞を使用するため、免疫反応や拒絶反応のリスクが低いと考えられます。また、採取から注入まで当日に実施できるため、入院の必要がありません。
MFAT治療のデメリット
- 効果は個体差がある
- 疾患を根本から治す治療ではない
- 数日間、炎症(痛み、熱感、赤み、腫れ)を伴うことがある
- MFATを投与する膝関節に感染症(化膿すること)が起こる可能性がある
- 一度効果を得たとしても、人によっては効果が持続せず、数か月後に効果が低下する場合もある
- 社会保険・国⺠健康保険など医療制度上の保険で受けることができない
MFAT治療が適応となる方(選択基準)
- 変形性膝関節症または半月板断裂の症状を伴う膝の痛みがある方
- 触診による関節線の痛みがある方
- 膝の内側または外側の関節線における自覚的な痛みが3ヵ月以上続いている方
- MRIまたは関節鏡で半月板断裂と診断された方
- 保存的治療に効果がなかった方
当院では、変形性膝関節症と診断出来る25歳以上の患者様で、程度としてはK-L分類2~4、一般的な標準治療(保険診療、ヒアルロン酸や装具療法など)を当院または他院で行なっても効果が不十分(Treatment Gap)、かつ骨切りや人工関節などの手術治療を望まない患者様に対し治療を提供しております。
K-L分類 | 正常 | 初期 | 進行期 | 末期 | |
---|---|---|---|---|---|
グレード0 | グレード1 | グレード2 | グレード3 | グレード4 | |
骨棘形成 (骨の棘ができる) |
なし | あり | あり | あり | あり |
関節裂隙狭小化 (関節の隙間が狭くなる) |
なし | なし | あり (隙間が1/2以下) |
あり (隙間が1/2以下) |
あり (隙間が1/2以下) |
軟骨下骨の骨硬化 (土台の骨が硬くなる) |
なし | なし | あり | あり | あり |
- K-L分類(Kellgren-Lawrence分類):変形性関節症(OA: Osteoarthritis)の重症度を評価するための分類基準です。主にレントゲン画像を用いて、関節の変化や損傷の程度を評価します。
- Treatment Gap:痛みはあるものの、現状の治療では効果不十分な状態といいます。一般的にその期間は9~13年といわれています。
MFAT治療が受けられない方(除外基準)
- 担癌状態にある方
- 抗癌剤もしくは免疫抑制剤を使用している方
※状態が落ち着いており医師が施術可 能と判断した場合はこの限りではありません 。 - 明らかな感染を有する方
- 発熱( 38.5 ℃以上)を伴った方
- 1ヶ月以内に同療法を受けたことのある方
- 重篤な合併症(心/肺/肝/腎 疾患、出血傾向、 コントロール不良な糖尿病や高血圧など) を有する方
- 薬剤性過敏症の既往歴を有する方
- その他、担当医が不適当と判断した方
治療の流れ
脂肪組織の採取
手術室にて、静脈麻酔および局所麻酔を行ない、大腿外側大転子周囲を切開します。切開部より、細い金属の管(カニューレ)を挿入し、必要分量の脂肪(約15~80ml)を手動にて吸引採取します。
切開部は縫う必要がないほどの大きさですが、1-2針縫合する予定です。
脂肪組織の加工
採取した脂肪組織を、当院院内の加工室にて、専用のキットを用いて組織を細断します。加工時間は約40分となります。
投与
加工完了後、診察室にておおよそMFATを10ml程度、関節内に投与します。投与後は約 15分そのままの体位で安静にしていただき、ガーゼを充て包帯を巻き過ごします。その後、医師が帰宅可能と判断した上で帰宅していただきます。
定期的なフォローアップ受診
術後、状態や経過を確認するため、定期的に経過観察を行います。
とくに術後3~4週間は皮下出血斑と腫れを生じますので、局所の安静保持と圧迫のため、ストッキング・ガードルなどを使用します。痛みが強い場合は適宜鎮痛薬の服用をお願いします。 尚、治療当日は飲酒をお控えください。
- 術後3日後
- 1週間後
- 1ヶ月後
- 3ヶ月後
- 6ヶ月後
※術後の症状に応じてこの限りではありません。
MFAT治療の副作用
MFAT治療の副作用として以下が生じる可能性があります
- ご自身の細胞を使用するため年齢や体調などに左右され、場合によっては安定した効果が出にくいことがあります(個人差があります)
- 注入時に痛み、施術後は痛みと腫れが出ることがあります
- 腫れは翌日から 2~3日あり、部位によっては 1 週間ほど続くことがあります
- 腫れている間は、治療部位を押さえると痛みがあります
- 内出血が出た場合には、1週間程度で良くなります
- 腫れ、痛み、内出血などは一時的ですが、症状の強い場合にはご相談ください
- 効果の持続期間は個人差があります
- その他、MFATそのものによる副作用は現在のところ報告されていません
- 脂肪採取をした部分の皮膚表面 に凹凸が出ることがありますが、丁寧にマッサージをすることで平らになってきます。また、脂肪採取には以下の事象が考えられ 、有害事象をはじめその他の有害事象発生時にもすみやかに対処します
例:深部静脈血栓、肺塞栓、大量出血、脂肪塞栓、腹膜穿孔、リドカイン中毒、外科的ショック等
費用
片膝(MFAT)650,000円(税込)
両膝(MFAT)990,000円(税込)
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