メニュー

2024.05.27カンボジアでの医療視察 その2

カンボジアでの医療視察 その2

こんにちは

非常勤医師をしている松山敏之です。

カンボジアでの医療視察についてお話する前に、その1ではカンボジアの歴史と現在のカンボジア医療体制についてお話させていただきました。

今回は、本題のカンボジア医療視察の話をしたいと思います。
私がカンボジアの医療視察で思ったことを簡潔に言うと

『カンボジアの人は病院に行かない』です。

それは、お金がないからとか医療体制が整っていないからとか様々な理由があると思います。さらに、私が個人的に思ったことは、お腹が痛いとか熱があるとか、そういうものに対して、病院に行くという感覚がまずないように思いました。今、本当に相当困ってないと病院には行きません。

現在の軽い症状でさえも病気として捉えていないのですから、血圧が高いとか、血糖値が高いなどの長期予後や病気を予防するという概念はまだまだ先ですよね・・・。

では具体的に医療事情をみていきましょう。

カンボジアの医療保険

前回のお話でカンボジアには包括的な医療保険はないとお話しました。そのため、カンボジアでは保険の加入によって受けられる医療がだいぶ変わってきます。

①大都市での民間病院医療
②中都市での民間病院医療
③公立の病院医療
④小児病院

と4項目でお話します。

ちなみに日本は国民皆保険ですので、基本的に全国民が3割負担(高齢者は所得によって負担率がかわる、0割の方もいる)です。高額医療費という制度もあります。民間病院でも公立病院でも患者側が支払うお金は同じです。その自己負担金を、さらに個人医療保険で払う人もいるといった感じですね。

大都市での民間医療

我々は今回ベトナムでも医療視察しました。
ベトナムの首都ハノイと並ぶ2大都市、ホーチミンの民間病院を見学させてもらいました。民間病院を受診できる人は富裕層や海外駐在員、海外旅行者などが対象です。

まず思うことは、院内がきれいで医療設備が非常に整っています。最新のCT、MRI、エコーにオリンパス上部下部内視鏡まで揃えてあり、院内で採血検査、培養検査もできます。

外科、内科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、歯科など、ひととおり診察することができます。皮膚科では美容レーザー、脂肪吸引まであり、なかなか日本でもここまで医療設備がそろっている病院はないのではないかと思う立派な病院でした。検査をして、そこからの実際の医療の質がどうかはまでは、見ることはできませんでしたが、病院設備はすごかったです。

中都市での民間医療

カンボジアの世界遺産であるアンコールワットがあるシェムリアップという都市に元気村グループのアンコール共生病院はあります。シェムリアップは観光客が非常に多いので、わりと大きい都市ではあります。 アンコール共生病院を見学させていただきました。

病院の受付にER
院内で採血もできますし、心電図もありました。

新しくきていただいた眼科の先生の診察室

手術室はありましたが、現在稼働はしておらず。

歯科も依然は診療していましたが、現在は行っていませんでした。

ひととおりの医療器材はあり、プライマリーケアは行えるといった感じです。

ただ、心電図でST上昇があり心筋梗塞を疑ったり、麻痺、意識障害で脳疾患を疑ってもそこから専門医はいませんしCT、MRI、カテ室、手術室はないので、そこから搬送となりますが、搬送先は車で5,6時間かかる首都プノンペンになります。その患者さんがどうなるか、想像は難しくありません。 お金がなくて病院は受診できないが、お金があって病院に受診しても、緊急疾患であれば診断治療ができない。それが中都市の民間病院です。

公立病院の医療

カンボジアの国民のほとんどは病気になると国の病院に受診することになります。シェムリアップの州立病院を見学させていただけました。 中央にある棟は最近、日本支援で建設された棟でこの建物はきれいでした。

院内内部の医療器材は見られなかったのですが、CT、MRIはあるみたいです。ただMRIは子供に限られ、それも本当に必要だと判断された小児のみということです。 写真は入院棟で現地の人はICUであると言っていました。酸素は壁に配管されておらず、ボンベが外に並べられています。室内は不衛生で、感染対策はされていません。食事病衣の提供はなく、家族が持ってくるとのことです。栄養管理や食事形態の調節は行っていないということです。

患者さんが多すぎるため、室内に入りきらず、外にベッドが置かれています。大きな部屋に所狭しとベッドが並べられて点滴がつなげられています。

状況をみるからに、検査や診断はされていないと思われ、おそらく対症療法だけかと思われます。苦しければ酸素、点滴、抗生剤といった感じでしょうか。感染症や外傷患者以外にも癌や血管系、膠原病などの患者もいるでしょうが、おそらく診断までいかずといった感じが見受けられました。

けっこう衝撃を受けました。

小児病院の医療

小児の医療に関しては、海外からのNGO団体が支援を行っているため、非常に充実していました。NGO団体が支援している子供病院を入口だけ見させていただきました。支払うお金はいくらでもいいみたいです。払えるだけ払ってくださいという制度のようです。

すべての施設で医療設備のみの見学で実際の医師が行う医療の内容までは見学できませんでした。機会あれば、今後は実際の医療内容まで見学できたらと思います。

小括

・カンボジアの医療は格差が非常に高い 。
・大部分の貧困層の医療は今現在も非常に低い。

我々に何ができるのか

国民皆保険である日本では、すべての人が簡単に医療機関を受診することができます。受けられる医療も高く、必要な場合には後方機関に速やかに受診することができます。先進国では現在、感染領域、腫瘍領域、免疫アレルギー領域などでは、遺伝子やタンパク発現から疾患を治療していく治療が最先端となっています。ノーベル医学賞などで有名になったオプジーボ®などの免疫チェックポイント阻害剤などは本当にまだまだまだ先の話なんだと思います。

カンボジアでは今、耐性菌が問題となっているようです。

薬剤の法整備がしっかりしていないため、町の薬局で抗菌剤が簡単に買えます。ペニシリン系のみならず、ニューキノロン系まで買えるとのこと。おそらく、先進国などで製造される安い後発品が流れてくるものと思います。またステロイドも買うことができます。患者さんは効いたから使おうとキノロン系抗菌薬やデキサメタゾンなどのステロイドを内服します。もちろん、キノロン系抗菌薬やステロイドを内服すれば、大体の感染症、免疫アレルギー疾患は改善します。ただ医療知識がある人間からしてみれば、そのような薬剤を乱用してしまったら近い未来にどうなるか。想像は難しくありません。

途上国での新しい医療問題を目にしたような気がしました。

我々にできることはたくさんあるけれど、根は深いです。

どうすればいいのか、考えていく必要があるのです。

最後に

日本の医療は高度でいつでも病院を受診ができ、清潔で便利です。やっぱりカンボジアより日本の方が良かったかと言われると、実はそうだと即答はできません。

現代日本医療は、ハラスメントや訴訟など多くのリスクを抱えながら医療を行います。人とのコミュニケーションに慎重になるだけでなく、医療行為を行うにも同意書だらけです。医療側と患者側の関係が希薄になっているだけでなく、医療スタッフ間の関係も以前より関係が希薄になっていると感じるのは私だけではないと思います。

カンボジアは医療レベルが低く、不便なことも多いですが、カンボジアの人々は互いに助け合うことがまだまだ生活の一部となっており、笑顔や思いやりなど、人と人との間に温かみが溢れています。

物質的な豊かさはあるけれど、世知辛い日本より、人間の温かみに溢れている心豊かなカンボジアのほうがいいと思う面が多くあるのです。私たち日本人は、互いに支え合う感謝や親切、思いやりなどどいった人間の温かさの大切さをカンボジアの人々から学ぶことができます。ぜひ多くの方が、元気村グループの支援活動に参加し、現地に赴いていただきたいなと思います。

今回の医療視察では元気村グループ、神成裕会長、裕介理事長を始めとした元気村グループスタッフのお力で行くことができました。

また、フォレストデンタル、裕正先生、森村先生、鴻愛会、文裕先生、ベトナムではNgoc先生、Minh先生とその関係者の方々、アンコール共生病院、加藤先生、西本さん、翔子さん、長岡さん、ベトナムでの医療視察では齋藤さん

他、書ききることができないほど、本当に多くの方のご厚意、ご協力により行くことが出来ました。どなたも親切で元気村グループの人が本当に心暖かい方ばかりだと感じました。

この場をお借りし、感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

一緒に行ったこうのす共生病院看護師木村さん、こうのすナーシングホーム伊藤事務長、 ベトナム交換留学生トゥエットもありがとうございました。

他にも元気村グループでは学校の設立や職業訓練施設、孤児院への支援も行っており、そちらも視察させてもらいました。またそちらのことも書けていけたらなと思います。

松山敏之

記事をシェアする
  • LINEでシェア
  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
CONTACT

お問い合わせ・ご相談

お電話でのお問い合わせ

メールでの問い合わせ

時間外窓口のご案内

時間外窓口のお知らせ

ただいまの時間は、時間外診療(救急外来)時間になります。 時間外診療(救急外来)をご希望される方は、来院される前に、必ずお電話でご連絡ください。

閉じる